「あの山にはクヌギの木がたくさんあるのにカブトムシがいない。たくさん放してカブトムシの楽園にしよう。」 「最近はオオクワガタが採れなくなった。みんなが喜ぶだろうからオオクワも放してあげよう。」 これらはやめるべきではないかと思う。 カブトムシやクワガタは、林の伐採、生木や朽ち木の極端な破壊、幼虫や成虫の極端な乱獲、農薬の使用、 天変地異等環境が変わらなければ人間が余計なお節介をしなくてもいくらでも繁殖し続けていける。 虫が生きていける環境というものを忘れてはいけないと思う。 今、カブトムシやクワガタがいないということは何らかの理由でそこは生きていけない環境ということだ。 そういう場所へいくら何百匹 放そうと全滅する可能性がある。 生きられたとしても今までいなかった生き物が突然増えたら他の生き物への影響も考えられる。 北海道にはかつてカブトムシはいなかったが飼育していたものが逃げて繁殖してしまった。 元々生息していたミヤマクワガタなどは強いカブトムシが突然現れて多少なりとも影響を受けたかもしれない。 たしかに森をカブトムシやクワガタでいっぱいにしたい気持ちはよくわかる。 しかし、やるのであれば虫を放す前にその虫の生態を知り、植物、水、まわりの生き物といった環境を整えることだ。 世界的に見るとカブトムシやクワガタの仲間は熱帯地方に多い。 日本のように亜寒帯も存在するような小さな島国に多くのカブトムシ・クワガタが生息しているのは特異なことなのだ。 なぜだろう?シイやカシなど常緑広葉樹で覆われていた日本列島だが、氷河期が終わり、 農業を中心とした日本人の生活が始まり、次々とクヌギやコナラなどの落葉広葉樹が植えられていったからだ。 特に幼虫が育つ朽ち木や、落ち葉が堆積した腐葉土が長い年月をかけて増え続けたことが大きいと思う。 カブトムシやクワガタは自然に増えたのではなく、人間が作り出した二次的な自然の恵みを受けて増え続けてきたのだ。 生き物というものはまわりの環境が自分と合致してはじめて繁殖することができる。 逆にいえば、虫そのものを人間が投入しなくても環境が整えば虫のほうからやってくるということだ。 食物連鎖の頂点にいる人間達よ十分に心せよ。 |
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